生活保護の捕捉率とは、生活保護基準以下の世帯で、実際に生活保護を受給している世帯数の割合のことをいいます。
日本の生活保護の捕捉率は今までの調査で見ると20%程度であろう。
生活保護基準以下の低所得者で生活保護を受給していない人が80%もいるという事になる。
(過去の調査)
所得再分配調査をもとに計算した所、1995~2001年までの捕捉率は16・3~19・7%で推移。
全国消費実態調査をもとに計算した所、1999年の捕捉率は18・5%。
国民生活基礎調査をもとに計算した所、1995年の捕捉率は9・9%。
という感じで調査方法によりバラつきはありますがいづれにせよこの調査で日本の捕捉率は20%未満である事は分かる。
ドイツやイギリスはいずれも85%以上と言われているため、日本の捕捉率が低いのがわかる。
最近でもこの捕捉率の調査が行われた。
2010年4月に厚生労働省は生活保護水準未満の収入や資産で暮らす世帯のうち、保護を受けている割合の調査結果を公表した。
総務省の統計に基づく推計では捕捉率は68.4%で、受給できる可能性のある低所得世帯のうち約3割が保護を受けていないとみられることが判明。
厚労省の統計に基づく推計では捕捉率は32.1%だった。「最後の安全網」で救済されていない低所得者が多数いる可能性があることが公的な調査で初めて示された。
しかしこの調査では大分開きがある。
これは過去の捕捉率とも異なる。
総務省の全国消費実態調査と厚生労働省の国民生活基礎調査で調査方法が違う事が理由であろう。
総務省の全国消費実態調査は住宅ローンがあると生活保護基準以下世帯でなくなりますが、厚生労働省の国民生活基礎調査には住宅ローンがある世帯も生活保護基準以下世帯に含まれていて、それだけ捕捉率を下げていることは確実です。
すなわち厚労省の統計は住宅ローンのある世帯が除外されていないため、総務省調査より割合が低くなったという事になる。
住宅ローンがあるから裕福とは限らないが確かに住宅ローンがない世帯は資産もないわけであるから本当の貧困ということになる。
という観点では総務省の調査が本当の貧困世帯のように思われる。
これは賛否両論であるがこの総務省と厚労省の開きがある理由が分かる。
この他にも開きの原因としては厚生労働省の国民生活基礎調査の調査方法は福祉事務所が中心で、福祉事務所の仕事の対象になっている世帯(低所得者、障害者、保育所、高齢者福祉など)が相対的に多くなってしまうのも理由ではないだろうか。
(捕捉)
■総務省の国民生活基礎調査に基づく推計は、国内の全世帯を4802万世帯と仮定して実施。この調査は住宅費を調べていないため、これを最低生活費に含めず計算した。生活費が最低生活費未満の家庭は約337万世帯で、貯金を保有しない家庭は約229万世帯。保護を受けている家庭は約108万世帯で、受給している率は32.1%だった。
■生活保護7割が未支給 厚労省、低所得世帯で推計~朝日新聞
厚生労働省は、生活保護の水準以下の低所得世帯のうち、生活保護を受けていない世帯に関する推計データを公表した。厚労省の国民生活基礎調査(2007年)にもとづく推計では229万世帯で低所得世帯の68%、総務省の全国消費実態調査(04年)にもとづく厚労省の推計では45万世帯、低所得世帯の32%だった。こうしたデータを国が公表したのは初めて。
厚労省は、国が保障する最低限の生活水準について検討中で、今回の推計データをもとに具体化を進める。
推計結果の違いについて、厚労省は調査手法の違いを指摘。国民生活基礎調査は聞き取りで調べ、消費実態調査は家計簿をもとに調べている。年収の全体平均を比べると、消費実態調査の方が31万円高いことなども影響しているとみられる。
生活保護の支給基準額は地域によって異なり、東京23区の4歳の子どもがいる夫婦3人世帯で月約17万5千円。
生活保護は、当事者の申請を受けて自治体が保護対象かどうかを判断する。その際、住宅などの保有資産も審査するが、今回の推計対象には住宅などの資産のデータが含まれていない。同省保護課は「今回、異なる二つのデータが出た。今後も、実態を把握するため、調査を続けたい」としている。
政府の今後の対応
1.保護世帯比は、いわゆる漏給の割合を表わすものではないが、資産や稼働能力等を活用してもなお保護の要件を満たし、かつ、保護を受給する意思のある方が保護を受けられないことはあってはならないことであり、改めて、地方自治体に対しその旨を通知し、徹底していく。
2.また、この間、雇用保険と生活保護の間をつなぐ第2のセーフティネットをはじめ生活保護以外の低所得者対策も講じているところであり、その一層の充実を図っていく。
3.今回と同様の調査を定期的に実施し、その動向を把握していく。