生活保護、裁判費用は?
人と争うのは体力もいるし、精神力もかかります。ましてや、それが裁判になったら、お金もかかるし労力もめちゃくちゃかかってしまいます。しかし、何かでトラブルが起こってしまい、どうしても争わなければいけなくなった時、生活保護者は裁判は起こせるのでしょうか?
「裁判は起こせます」
当然ですが、生活保護を受けているいないに関わらず、裁判を起こすことはできます。では、裁判を起こす際の費用はどうなるのか?
「法テラスなどで費用の立て替えなどがあります」
ある一定基準以下の収入の生活困窮者が訴訟を起こす際に、「民事法律扶助制度」を利用することで裁判を起こすことが可能です。この制度を実施しているのは日本司法支援センター(略称:法テラス)が行っています。ただし、法テラスで一定条件があるのでざっくりと記載しておきます。
①賞与なども合わせて収入などが一定基準を下回る。
②勝訴の見込みが無い訳ではない。
③民事法律扶助の趣旨に適する。
です。①と③を満たしていれば、無料法律相談を受けることができます。また、立て替え制度が利用できるのは①②③全ての条件をクリアーしていなければいけません。特に②が重要です。この言い分では勝訴の見込みが無いということであれば、訴訟はできないと考えていいかもしれません(まずは相談です)。
生活保護、裁判の判例
ここでは、いくつかの生活保護に関わる裁判の事例について分かりやすく記載します(特に身近でありそうな判例をいくつか抜粋し、文章を省略して記載しています)。
●求職者の稼働能力活用 岸和田訴訟
【内容】30代の方が就職口を探しても見つからないため、保護申請をしたところ5回にわたり却下される。
【一審】生活や就労の聴取をしっかりと取らず、原告の年齢や健康状態のみで即断し、原告夫婦への対応をしなかったと判断。却下の決定を取り消し、岸和田市へ70万円の支払いを命じました(大阪地裁:平成25年10月31日判決)。
●障害者の自動車保有の可否、枚方身体障害者自動車保有事件
【内容】生まれつき歩行困難な障害を持つ原告が、生活保護を受け始めた後、日常生活や通院で使っていた資産価値の無い車の処分を指示。従わなかったため生活保護を廃止。
【一審】自動車の保有については認められるものではないということを示唆しつつ、自動車を保持することで自立助長や生活の向上に繋がることを踏まえた上で、自動車以外の通院が困難かつ廃止処分の違法性を認めました。また、廃止してから約2年経過しているにもかかわらず、自動車を処分していないことを理由に却下したことを注意義務違反を認め、損害賠償請求に(大阪地裁:平成25年4月19日判決)。
生活保護、裁判の支払い命令
というような感じで、生活保護に関する色々な裁判が行われています。原告側が勝訴すれば、もちろん支払い命令が生じて賠償金をいただけます。上記のように岸和田市へ70万円の支払い命令が例になります。賠償金が入ると収入と認定され、保護費を減額される可能性もあるので注意が必要です。
さて、勝訴すればいいのですが、万が一敗訴してしまった場合はどうなるのでしょうか?
「返済の義務は免除できます」
そうなんです。敗れてしまった場合には免除してもらうこともできるんです。そりゃそうですよね。敗訴したうえに支払うのは無理ってもんですから・・・。
生活保護、裁判で外国人は?
さて、ここまでは日本の方の生活保護の裁判についての判決などについて記載しましたが、外国人の方の判例を見てみましょう。
●永住者の資格を保持している外国人の申請を却下
【内容】永住権を保持している中国籍の方が、大分市福祉事務所に生活保護の申請を行いました。福祉事務所が申請を却下したため、取り消し、義務付けなどを求め、大分地方裁判所に提訴(文章略)。
【一審】「外国人への生活保護法の適用はない」とし、保護申請却下処分の取り消し及び、保護開始の義務付けを不適法として却下。
【二審】却下した行為は「公権力の行使」に該当するという判断をし、却下処分を取り消し(→大分市上告)。
【最高裁】大分市の敗訴部分を破棄して、中国籍の方の主張を退ける(平成26年7月18日判決)。